2022年9月12日~22日 実習感想
【はじめに】
私は今回、職場で実施している「農村派遣研修」という研修の一環でマドリンさんの所にお邪魔させていただき、11日間、酪農家の仕事を体験させていただきました。普段は作物関係の仕事がメインのため、牛にはほとんど触れたことのない私でしたが、角倉さんには大変丁寧に仕事を教えていただき、不慣れながらも、充実した研修生活を送ることができました。
【マドリンでの体験】
牧場での作業はHPにも記載あるとおり、朝は5時~9時、午後は15時~19時頃に行い、朝夕2回の搾乳を行います。その他、餌やり、糞尿掃除、寝藁補充やバンクリーナー掃除など、様々な作業を体験させていただきました。過去に他の酪農家さんの所で研修した先輩達からは、「清掃以外はあまりやらなかった」「搾乳は見学だけ」等の話を聞かされていただけに、酪農家のリアルな一日を体験できるマドリンさんでの研修は、毎日が驚きの連続で、初めてのことだらけの非常に濃い内容の研修でした。
語彙力が乏しく、感じたものを上手く言語化できないのが残念ですが、今まで知らなかった牛の生態への驚きをはじめ、耳標の打ち込みやモクシの装着など、「牧場でよく見るアレはこういうことか!!」的な感動がものすごく多かったです。ただ単に作業を眺めているだけでは見えてこない苦労や感動を、実体験を通して肌で感じることができるのは非常に貴重な経験だと思います。
酪農の仕事以外にも、ラジオの収録の見学、「サンタまるしぇ」の手伝いや地域の農家さんとの交流など、角倉さんが日々過ごしている「リアル」な生活を一緒に体験させていただきましたが、私が毎日疲労でヘロヘロになりながら過ごす一方、多忙ながらも、何でも楽しそうに全力で取り組む角倉さんの姿からは、非常に熱いパッションを感じました!!
【自分の変化】
研修を終えての率直な感想は、当初イメージしていた「キツさ」と実際に体験した「大変さ」が全く異なるものだったということです。
本研修に参加するまでは、正直なところ、いわゆる「3K」的なイメージを酪農に対して抱いていました。「朝から晩までとにかく単純作業&肉体労働が続くんだろうな…」というのがリアルな印象です。
しかし、いざ研修が始まって感じたのは、そうしたネガティブな意味を含んだ「キツさ」ではなく、「食品」と「生き物」を丁寧に扱い、一生懸命牛を世話する現場だからこその「大変さ」でした。さらに、その大変さも、やりがいや楽しさや、時に苦労や解決した時の嬉しさが詰まった、非常にポジティブなものだと感じました。
酪農家の仕事を何も知らなかった頃は、毎日同じ作業を続けるのは苦じゃないかと思っていましたが、実際に体験してみると、毎日同じ作業に見えても、その日の牛の体調に合わせて餌の量を変えたり、搾乳方法を調整したりと、むしろ毎日違う作業をしてるんじゃないかと感じるくらい変化に富んでいて、日々新しい発見がある仕事だと思うようになりました。同じく3Kの話で言えば、マドリンさんにいる間「汚い・危険」だと感じる場面は殆ど無かったのが印象的でした。
今年に入り、農場HACCPを取得されたこともあって、これまで以上に牧場内の課題の発見・解決に目を向けているとのお話を伺いましたが、畜舎消毒や定期的な糞尿処理、作業具の洗浄や整理整頓など、「より良い環境に」という想いで、丁寧に管理されている牧場だからこそ、牧場的な濃い臭いもせず、いつでも必要な道具があるべき場所に保管されている状態が維持できているのだと思います。
刃物や道具が溢れていて、思わぬところで怪我をするのが牧場だと勝手に思い込んでいただけに、「道具があるべき場所にある」状態というのは、従業員や研修生にとって非常に安心して働ける環境だと感じました。
【搾乳について】
これまで、「酪農家=搾乳」の安直なイメージを持っていましたが、ただそこにいる牛を搾れば良いのではなく、栄養管理や衛生管理、病気の有無など、牛舎内の全てに目を配り、苦労して世話をし、健康な牛を育て上げて、ようやく辿り着ける作業が搾乳なのだということを感じました。
また、搾乳作業そのものも、牛を怖がって雑に搾乳機を装着してしまうと、空気や不純物を吸い込んでしまったり、上手く搾り切れず、乳が残ってしまう等、生乳の品質や牛の健康にも影響を与えるミスにつながる事を知り、一言では言い表せない奥深さや難しさを学ばせていただきました。
【おわりに】
私は現在公務員として、農業に関わる部署で仕事をさせていただいていますが、これまでは実際に現場を訪れて直接農家の方とお話させていただく機会はほとんど作れておらず、執務室内の業務だけで終わることがほとんどでした。そんな中、今回研修に参加したことで、改めて自分の目で直接見ること、体験することの大切さを知り、普段の業務だけでは得られる情報に限界があることを痛感しました。
生産者の方々が普段何を考えて、どのように作業しているのかを知り、少しでも現場目線の考えが持てるよう、今後は各地に赴く機会を増やしていければと思います。
マドリンさんでの研修の他にも、広尾農協の方々をはじめ、研修期間中には多くの方とお話させていただく機会をいただき、普段の業務だけでは知ることのできない地域の実情を学ばせていただきました。御多忙のところ、大変貴重な体験をさせていただき、本当にありがとうございました。